日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2022年9月30日話すネタがない! この解決策とは?


★話が苦手な理由


日本話し方センターのベーシックコースでは、話すのが苦手という人が、話すことに関する知識を学び、知識をもとに話すトレーニングを行って、苦手克服に取り組んでいます。そうした受講生と話をしていると、話が苦手な原因は自分の話の仕方がヘタだから、と思っている人が大半です。確かに、話の仕方に自信が持てなければ、苦手意識を持ってしまうのは当然でしょう。しかし、私は話の仕方よりも苦手意識に影響を与えているものがあると思っています。それは「話すネタを持っていない」ということです。




★材料がないと何もできない


あなたがどんなに料理が得意でも、その場に材料が一つもなければ自慢の腕の振るいようがないでしょう。逆に、必ずしも料理が得意ではなくても材料さえあれば何とか料理を作ることはできます。この例と同じように、話も材料=ネタがあれば何とか話すことができますが、ネタがなければどんなに話が上手な人でも話をすることができません。


ところが、この事実に話が苦手な人は意外に気付いていないのです。職場で雑談などをしている際に何か離そうと思っても話すことがないので、黙ったままになってしまう。本当は「何か話せるといいんだけど・・・」と思っているのですが、黙っている自分に自己嫌悪に陥ってしまう、という人もいるのではないでしょうか。また、朝礼でスピーチ当番が近づいてくると「何を話せばいいんだろう」と悩み続けますが、いくら考えても「これだ!」というものが思いつかず、結局、適当な話をしてしまった、という人もベーシックコースの受講生には少なくありません。


では、どうすれば話のネタができるのでしょうか。



★普段から話のネタをストックしておく


それは、普段から話のネタを集めてストックしておくことです。話のネタは、話す段になって急に浮かんでくることは決してありません。日常の生活の中で心に残ったものをコツコツと集めてストックしておくことが必要なのです。




◎自分の体験をネタにする

話のネタとして最も効果的もの、それは自分の体験です。例えばこのようなものです。


先日ゴルフに行った際、ラウンドが終わってからゴルフバッグを係の人に預け、代わりに引き換え札をもらいました。着替えも終えて、帰る際にゴルフバッグを受け取ろうとしたところ、引き換え札が見当たりません。多分「札をもらったところに置き忘れたんだろう」と思い、そのことを係の人に伝えて引き換え札なしでゴルフバッグをもらって家に帰りました。ところが、帰ってからボストンバッグを開けると、そこに引き換え札が入っていたのです。更衣室でスマホと一緒にバッグに入れたことをその時に思い出しました。翌日ゴルフ場に電話して、引き換え札を簡易書留で送り返しました。札が見当たらないときに、身の回りを確認していたら、ゴルフ場に迷惑をかけずに済んだはずです。これからは、何かが見当たらない場合、最低限身の回りの確認はしようと思いました。


いかがでしょうか? 日常で起こったちょっとしたことでも、このように話のネタにすることができるのです。



◎人の話、書かれたものをネタにする

また、日常の中で聞いた人の話や書かれたものの中にも話のネタは実にたくさんあります。こちらも少し例を示してみましょう。


まず、人の話の例です。
私は大学を卒業して銀行に就職し、ある支店に配属されました。ある日、その支店で庶務を担当している50代の人が、重そうな荷物を1階から2階に運んでいます。大変そうなので、私が手伝おうとしたところ、その人はこう言ったのです。「やめておいた方がいいよ。そりゃ、手伝ってもらった方が私はありがたいよ。でも、今手伝ってもらったら君はこれからも私を手伝おうとするでしょう。そうして何度か手伝ってもらううちに、私は君に手伝ってもらうことを当たり前と思うようになると思う。そうすると、ありがたいという気持ちも薄れてきて、そのうちに手伝ってくれないときに不満を感じるようになる。そうしたら人間関係がギクシャクしてくるんだよね」。私はこの話から人の心理の一面を学びました。それ以来、人にしてもらったことを当たり前と思わないよう自分を戒めています。


次に、書かれたものの例を示してみます。
先日、プレジデントオンラインで「実は若者と老人の記憶力には差はない」という記事を見つけました。「年を取るほど記憶力が衰える」というのは事実ではなく、覚えようという意欲がなくなることが原因だ、という趣旨の記事でした。確かに我が身を振り返ってみると、今は若い時ほどには物事を覚えようとはしていないように思えました。この記事を読んでから、人の顔と名前や目にした数字などを意識して覚えようとしています。すると、確実に以前よりは記憶に残っています。全ては意識、意欲の問題だと思いました。


これらはほんの一例ですが、日常的に聞いたり目にしたりしているものが話のネタになるのです。




★どうすればネタが集まるか


では、このような話のネタはどうすれば集めることができるのでしょうか。



◎意欲を持つ

まずは、話のネタを集めようという意欲を持つことです。上に例示したように、私たちの日常には話のネタになるようなものがたくさんあります。しかし、私たちはそのほとんどを心に留めず、スルーしてしまっています。これはとても勿体ないことです。「集めよう!」と意識するだけで、以前よりも日常接する物事に対して興味や関心が持てるようになります。そうすると、今まで何気なく見ていたテレビ番組やネットの記事でも「そうか。この人のように考えるとピンチの時でも少し落ち着けるかも」「サランラップってこういう使い方ができるのか! 知らなかった~」と、以前よりも心に留めながら見聞きすることができるようになるでしょう。話のネタを集めようという意欲を持ち、様々なことに心を留めることが増えてくることが話のネタ集めの第一歩です。



◎注意深く観察して考える

意欲の次に必要なことは、日常接する物事を注意深く観察するということです。ネタ集めに意欲を持ち、日常の物事に興味、感心を持つようになっても、それらを表面的に見ているだけでは話のネタにはなりません。「これはなぜこうなっているんだろう」「あの人はなぜあの時に喜んだんだろう」など、見聞きしたことについて、注意深く観察し、それについて考えることがとても重要です。


例えば、「東京の本社機能の地方への移転を検討する企業が増えている」という記事を見て「本社を地方に移転させようとする会社が増えています」だけでは話にはなりません。「なぜ東京から移転させるんだろう」と掘り下げて考えることが大切です。そうすると、「本社を地方に移転させようとする会社が増えています。リモートワークが普及し、自然豊かな場所でプライベートも充実させたいという人が増えてきていることに要因があるようです」と、少し深みのある話ができるようなります。




★留意すべきこと


さて、このようにして話のネタを集める際に最も重要なことがあります。それは「そのことに対する自分の意見を持つ」ということです。
上に示した、本社の地方移転検討とその理由を話した部分を読まれて、皆さんはどう思われたでしょうか。何となく物足りないように感じた人も多いのではないでしょうか。上の例は、理由も含めて事実をそのまま述べているだけです。話としての面白みに欠けています。話は、聞いた人に共感、納得してもらうことがとても大事なのですが、事実を述べただけでは共感も納得も得られません。それは単なる報告だからです。聞いた人は「だからどうなの?」という反応になることが大半でしょう。共感、納得してもらうためにぜひ話のネタには自分の意見をつけてください。
例えば、上の例に自分の意見をつけるとこのようになります。「本社を地方に移転させようとする会社が増えています。リモートワークが普及し、自然の中でプライベートも充実させたいという人が増えてきていることに要因があるようです。これは、これからの働き方や働くことに対する価値観などが大きく変化する現れではないでしょうか。今後、どういう動きが出てくるのか、注意してみていく必要があると思います」。自分の意見をつけて話をすることで、聞き手の共感や納得を得ることができるのです。
ぜひ自分の意見をつけて話のネタをストックしていってください。



★コミュニケーション全般について体系的に学びませんか?


日本話し方センターのベーシックコース2日間集中セミナーでは、今回紹介した話のネタ集めを含めて、話し方やコミュニケーション全般について、幅広く体系的な講義を行い、それに基づいたトレーニングを行っています。その効果は多くの受講生が実感しています。ぜひ受講者の声をご覧いただいた上で、受講をご検討ください!

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